GISを専門としない研究者のためのQGIS/GRASS等入門

QGISやGRASS等の「このやり方をこうやって書いていてくれればあんなに苦労しなくても済んだのに..」といった経験をまとめている備忘録です

入門の入門 -ソフトウェアの入手①-

持っている地理情報データ(行政単位の統計データ、位置情報付き(点)データ、紙地図、衛星画像等)の編集・分析・視覚化などの作業に必要なソフトウェアとその使い方を紹介します。主に使用するソフトウェアは、QGIS, GRASS, SAGA等(時々R)です。

上記のソフトウェアの主な用途と入手先、インストール方法について説明します。

 

1.QGIS

最も良く使うであろうソフトウェアです。後に紹介する衛星画像(ラスターデータ)の高度な編集・分析を行いたい場合を除くと、大抵の作業はこのQGIS上(またはQGISから他のソフトウェアの機能を呼び出す)だけで処理できます。

どちらかと言えば、ベクターデータの編集や処理が得意なソフトです。ベクターデータとは点・線・面のいずれかの3要素で示される図形データのことですが、一般的なドローソフトと違うのは図形に緯度経度の位置情報が付く点です。GISではこの位置情報を使って、ベクターデータどうしの位置関係が演算されます。これによって1枚の「地図」として複数のベクターデータを重ねて表示したり、背景となる紙地図や衛星画像といったラスターデータと同時に表示したりできます。ベクターが得意と書きましたが、QGIS自身の機能または他のソフトウェアの機能の呼び出しで、ラスターデータの編集・分析も一通りこなします。

1.1.QGISの入手

以下より自分のPCのOSに合ったものをダウンロードして下さい。

http://qgis.org/ja/site/forusers/download.html

通常はWindows版のLatest releaseかLong term release repositoryの64bit版をダウンロードすることが多いかと思います。この例では最新の64bit版を選択しています。

2.2.QGISのインストール

ダウンロードしたインストーラーは各自のPCの設定に沿ってどこかのフォルダーに入っています(デフォルトではダウンロードフォルダ)。

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 インストーラをダブルクリックしてインストールウィザードを起動。

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次へをクリックして画面の指示に従って進める。

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同意して次に進む。

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特にコンポーネントは選択しないでOK。

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インストールがぐんぐん進みます。GRASSやSAGAといったQGISから呼び出して使用できるGISソフトウェアもこのとき自動でインストールされます。

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完了をクリックすればインストール終了です。

 

 

 

目次

このブログで扱う体系的なエントリ(GISおよびGISを使った地理情報活用の基礎知識)の一覧です。随時更新します。

 

1.入門の入門 -ソフトウェアの入手先とインストールの仕方- 

2.データの入手① -行政境界とかのベクターデータ(世界編)-

3.データの入手② -様々な衛星画像と入手先- 

4.データの入手③ -地形データ(DEM)-

5.データの入手④ -人口データ-

6.データの入手⑤ -気象データ-

7.データの入手⑥ -その他の地理情報データ-

8.データの入手⑦ -行政境界とかのベクターデータ(日本編)-

8.ジオコードとジオリファレンス -紙地図などの位置情報を持たない画像の導入-

9.位置情報付点データ(CSV等)のインポート

10.QGISにおける基礎的なレイヤ操作

...

はじめに

論文の作成などで、収集したデータからGISを使って見栄えのする地図を作りたい、距離や面積などを計測したい、一歩進んで自然環境の分布と組み合わせた分析をしてみたいといったことがあると思います。私は海外でのフィールド研究を専門にする研究者なので、割と身の回りの研究者からそういう希望を良く聞きます。その際やはり良く受けるのは、「GISを使ってみたいけどどこから手を付けていいか分からない」という相談です。 

かつては非常に高価なソフトウェアであったGISも、低価格化が進み個人でも何とか購入できるぐらいのものになってきました。それでも一般的な文書作成や表計算ソフトウェアと比べると、依然として高価です。比較的手に届く価格帯で入手できる(ベーシック)パッケージで扱えるのは、GISデータの基礎的な処理や初歩的な分析部分がほとんどで、少しGISに慣れてきてちょっと特殊な分析が行なってみたくなってくると、高価な追加パッケージの購入が必要になることがほとんどです。このようにGISは、他の研究分野を専門としつつ時々必要に応じて使いたいと思っているユーザーにとっては、導入コストの面で色々と敷居が高く、それで結局GISを自分の研究に導入することを諦めてしまっているように思います。 

GISに多少馴染みのある人は、QGIS, GRASS, SAGA, などの名前を知っているかもしれません。これらはオープンソースと呼ばれるソフトウェアで、ソフトウェアの開発者と世界中のユーザーで形成されているコミュニティによって支えられています。バグの修正や新機能の実装など、ソフトウェアの進化も日進月歩で進んでいて、商用ソフトウェアに引けを取らない高度な分析が可能になっています。しかしそれまでGISに全く触れたことのない研究者が、必要に迫られて自分のデータをGISで扱いたいと思い立ったとします。その時これらのオープンソースGIS が使われて、必要な地図なり分析結果なりが得られているでしょうか。実際に見聞きしてきた範囲では、そういった事例はまれなように思います。 

原因のひとつに、これらのオープンソースに関しては初学者がとっつきやすい情報源(マニュアルや解説本)がほとんどないことがあるように思います。(主にネット上で)散見される情報源には多くの素晴らしいものがありますが、一方で記述が難解である程度のGISの知識を前提としていたり、扱っている情報が断片的であることが多いように感じます。そうした情報の海を執念深く探索し、必要な情報を繋ぎ合わせ、ようやく目的とする分析を可能とする手順を見出して、最後にまた試行錯誤しながら(商用ソフトウェアでないため、細かい部分でユーザーの自主努力を求めるような部分があります)自分が持つデータに適用していくといった作業が要求される状況は、オープンソースGISが持つ素晴らしい可能性が十分に発揮されていないようで残念な気がします。

このブログは、QGISやGRASSを自分で扱う or 他人に使い方を教える際に感じている、「こんな風にまとめてくれている解説本やサイトがあったら便利だったのに..」「このやり方をこうやって書いていてくれればあんなに苦労しなくても済んだのに..」といった経験をまとめていく備忘録です。特にGISを専門としない研究者にとってGISを学ぶ目的は、GISを使いこなすことそのものにはなく、データから導き出される地理的なリアリティが自身の研究の視野を拡大してくれることを実感として理解できるようになることにあると思います。そのためには、GISを使いこなす技術の習得そのものに関しては、不必要な苦行は極力廃されてもいいのではないかというのが私の考えです。このサイトの情報によって、一人でも多くの研究者が文書作成や表計算のソフトを扱う気軽さでGISを扱えるようになり、様々な研究分野において少しでもGISが多く活用されるようになれば幸いです。