GISを専門としない研究者のためのQGIS/GRASS等入門

QGISやGRASS等の「このやり方をこうやって書いていてくれればあんなに苦労しなくても済んだのに..」といった経験をまとめている備忘録です

データの入手① -行政境界とかのベクターデータ(世界編)-

「手元にある国別・地方別の統計情報等を色分けして地図表示したい」というのは、ちょっとGISを使ってみたいという場合の理由の第一位なのではないかと思います。

そのためには、各国の行政境界の白地図データ(境界のラインまたはポリゴンなどのベクターデータ)が必要になります。商用ソフトウェアなら各国の行政境界データがいっしょに付いてきたりしますが、QGISを使うならどこかから調達してくる必要があります。以下、データが入手できるサイトの幾つかを紹介します。

 

1.GADM database of Global Administrative Areas

http://www.gadm.org/

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行政境界データが国別・データ種別(shape file, kmz file等)毎にダウンロード可能です。境界線の精度はそこそこで、余程厳密な地図目的の利用でなければこれで十分かと思います。データ種別(File format)については別のエントリーで説明しますが、特に拘りがなければ「Shapefile」というのを選んでおけば間違いないです(ある商用GISのファイル形式ですが、ベクターデータのファイル形式としては一番普及しています)。

 

2.DIVA-GIS Download data by country

http://www.diva-gis.org/gdata

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国別・地物別にデータがダウンロードできます。複数のソースからの地物をまとめてダウンロード選択可能で便利です。選択可能な地物はAdministrative boundaries (GADM), Inland water, Roads, Railroads (Digital Chart of the World), Population (CIESIN, 2000. Global gridded population database), Climate (WorldClim), Gazetteer (U.S. National Imagery and Mapping Agency's (NIMA) database of foreign geographic feature names)などです。

河川(Inland water)などは描画精度は高いものの本来河川が連続している部分が途切れている、河川名称のデータはないなど実用には難しいので、精度は落ちる(大河川のみしかサポートされていない)ものの下記のNatural Earthのデータを使ったほうが便利かもしれません。

Roadが結構データがしっかりしていて、なかなか使えそうです。

PopulationやClimateはラスターデータなので別のエントリーで詳しく説明します。

Gazetteerのデータは非常にユニークで、世界各国の地方別官報(県別地誌のようなもの)から拾った地名が位置情報付き(ただし配置はだいたい格子状で、正確な地図としての精度には欠ける)で入手できます。

 

3.Natural Earth: Free vector and raster map data at 1:10m, 1:50m, 1:110m scales

http://www.naturalearthdata.com/downloads/10m-physical-vectors/

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行政境界以外の地図装飾のためのデータがここからダウンロードできます。ここでは海岸線、海洋、島嶼、河川湖沼、水深等の水系にまつわるデータが国を跨いだ世界中単位で提供されています。

個人的には河川の流路と名称のデータ(Rivers + lake centerlines)である

http://www.naturalearthdata.com/http//www.naturalearthdata.com/download/10m/physical/ne_10m_rivers_lake_centerlines.zip

が一番需要があるのではないかと思います。

 

4.入手したシェープファイルQGIS上での表示

GADMから入手した行政境界線、Natural Earthからの河川流路、DIVA(Digital Chart of the World)からの道路網をQGIS上で重ねて表示するとこのようになります。

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 Gazetteerは拡大してみるとこんな感じです。10km四方に1-20前後の地名が分布しています。画像はバングラデシュですが、データテーブル上は管区(DIVISION)、県(ZILA)の下に村(Village)の名前が来ています。面白そうなデータです。もしセンサスのデータなどと地名が整合していれば、かなり使えるデータになりますが・・。

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QGISシェープファイルを読み込む方法については他のエントリーで詳しく説明しますが、かいつまんで説明すると下記のような感じです。

ダウンロードした各データは圧縮ファイル(Zip)形式で各人のPC環境に準じたフォルダ(Winならデフォルトではダウンロードフォルダ)に格納されていると思います。

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これら圧縮ファイルを適当な場所に解凍すると、フォルダーの中身は(Shapefile形式でダウンロードしている場合には)以下のような状態になっています。

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Shapeファイルは単独ではなく、複数のファイルの集合体になっています。なのでどれかひとつでも欠けてしまうと、QGIS上で正常に表示できなくなってしまいます。ダウンロード・解凍したシェープファイルを他のフォルダに移してQGIS上で使用する際には、全てのファイル群を(またはフォルダごと)を移動するようにしてください。

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QGISを立ち上げたら、左上のベクターファイルの追加アイコン > ブラウザの順にクリックします。立ち上がったファイルエクスプローラ上で、解凍(移動)したシェープファイルのフォルダに移動します。ファイル種別を ESRI shapefilesに切り替えておくと他の余計なファイルが表示されなくなって探すのが楽です。ファイルが見つかったら選択&左下の「開く」をクリックすればOKです。